現代語訳(枠内)
さて妊娠中は、少し気分が悪いといっても、むやみに売薬などを服してはいけない。大方はよく養生して、薬を服(のま)ないのがよい。
もし薬を用いろうとするならば、熟練した医者を頼りにすること。夏月といえども板敷などにいて、腰を冷やしてはならない。冬ならば腰巻など厚くして温かくすること。
また針仕事などしても、飽きて疲れるまでしてはならない。程よく体を動かし、はたらいて、よく慎み守れば、必ずよき子が生まれ一生の宝となるだろう。
この外、産前・産後の育て方は、子の数多い老女に聞いて相談すること。出産が軽かったとして、のちに慎まなかったならば、大いな害があるだろう。
>>原文(史料解読文)
解説
史料挿絵は、傘の中の女性が前に赤ちゃんを抱っこしていて、周りには下女や下男と思われる人々が付き添っており、出産を祝福するように小鳥もたくさん集まって来て、微笑ましいです。確かに『女大学』は村とか下賤には余り関係ないようだ。
原文(史料解読文)
さて、懐胎(くわいたいひ)のうちは、少(すこ)し気分(きぶん)悪(あし)きとて、むざとしたる売薬(ばいやく)など服(のむ)へからず、大(おほ)かたはよく養生(やうじやう)して、薬(くすり)服(のま)ぬがよし
もし薬(くすり)を用(もち)ひんとならば巧者(こうしや)なる医(い)を恃(たの)むべし、夏月(かげつ)といへども、板敷(いたじき)などに居(を)りて、腰(こし)を冷(ひや)すべからず、冬(ふゆ)ならば、腰(こし)まきなど厚(あつ)くして、温(あたゝか)にすべし
又(また)針線(はりしごと)などするとも、倦労(うみつか)るゝまでなすべからず
程(ほど)よく、体(たい)を動(うご)かしはたらきて、よく慎(つゝ)しみ守(まも)らは、かならずよき子(こ)を産(うみ)て、一生の宝(たから)なるべし
此外、産前・産後の養(やしな)ひ方は、子(こ)数多(あまた)もてる老媼(おうな)に問(とい)て、計(はか)らふべし、産(さん)軽(かろ)しとて、後(のち)を慎(つゝし)まざれば、大なる害(がい)ありとなん
史料情報
- 表題:女大学栄文庫
- 年代:嘉永4. 8.(1851)/栄久堂 山本平吉 梓
- 埼玉県立文書館収蔵 小室家文書2342
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女大学
1.概論 2.列女伝 3.近江八景と和歌 4.手習い 5.洗濯 6.お稽古
7.裁縫 8.髪・化粧 9.子育て 10.身分格差 11.音楽活動